ペットと「帰れない夜」に備える|飼い主が外出先で被災したときの準備

「あの子を置いて、帰れなくなったら」
防災の話をするとき、多くの飼い主さんが真っ先に考えるのは「一緒に逃げること」ではないでしょうか。でも、もうひとつ、あまり語られない「もしも」があります。
それは、飼い主自身が外出先で被災して、家に帰れなくなるときです。
通勤途中に大きな地震が起きた。出張先で交通機関がすべて止まった。急病で入院することになった。そんなとき、家に残されたあの子は、どうなるのでしょう。
「うちは誰かに頼めるから大丈夫」と思っていても、いざというときに連絡先がわからなかったり、合鍵がなかったり、その子の情報が何も伝わらなかったりすることは、実はとてもよくある話です。
この記事では、飼い主が不在のときに備える「もうひとつの防災」について、一緒に考えていきます。
まず知っておきたい「帰宅困難」のリアル
東日本大震災のとき、首都圏では約515万人が帰宅困難者になったといわれています。電車が止まり、道路が渋滞し、多くの人が職場や避難所で夜を明かしました。
そのとき、自宅にペットを残していた飼い主さんたちは、どれほど心細かったことでしょう。
犬は食事の時間になっても誰も来ない。猫はトイレが満杯になっていく。水が切れてしまう。そういった状況が、数時間から数日にわたって続くことがあります。
帰宅困難は「遠い話」ではありません。毎日の通勤・通学・買い物の延長線上に、静かに潜んでいます。
「頼める人」を今のうちに決めておく
一番大切な備えは、あの子のことを頼める人を、あらかじめ決めておくことです。
家族・友人・近所の方・ペット仲間など、候補を2〜3人リストアップしておきましょう。「いざとなれば頼める」ではなく、「頼んでいいか」を事前に話し合っておくのがポイントです。
頼める人が決まったら、次のことをセットで準備します。
- 合鍵を渡しておく(または合鍵の保管場所を伝えておく)
- 連絡先を交換しておく(LINEや電話番号)
- その子の基本情報を共有しておく(後述)
「急に頼むのは申し訳ない」と感じる方もいますが、お互いさまの関係を作っておくことが、地域の防災力にもつながります。ペット仲間同士で「もしものときは助け合おう」と話し合っておくのも、とても心強い選択肢です。
「うちの子情報シート」を作っておく
合鍵を渡しても、その子のことを何も知らない人が来ても、うまく世話ができません。だからこそ、「うちの子情報シート」を作っておくことが大切です。
情報シートに書いておきたい内容は、たとえばこんなことです。
- 名前・年齢・犬種または猫種・性別
- ごはんの種類・量・回数・与え方のコツ
- 水の場所・トイレの場所・掃除の仕方
- 薬を飲んでいる場合はその内容と与え方
- 怖がるもの・苦手なこと(雷・知らない人・特定の音など)
- かかりつけ動物病院の名前・電話番号
- 体調で気になることがあれば
このシートは、玄関の内側やキャリーバッグの近くなど、来た人がすぐ目につく場所に貼っておくのがおすすめです。スマートフォンのメモやクラウドに保存しておき、頼む人に共有しておくのも安心です。
もふ手帳に日頃から記録しているごはんの量や通院履歴があれば、こうした情報シートをまとめるときにとても役立ちます。
自動給餌器・自動給水器の活用を考える
「頼める人がすぐには来られないかもしれない」という状況に備えて、自動給餌器や自動給水器を日頃から活用しておくのも一つの手です。
特に猫は、犬に比べて単独でいられる時間が長い子も多いですが、それでも食事と水は欠かせません。
自動給餌器は、設定した時間に一定量のごはんを出してくれます。停電時には動かないものも多いので、電池式のタイプを選ぶか、電池でのバックアップがあるものを選ぶと安心です。
自動給水器は循環式のものが多く、水を新鮮に保ってくれます。ただし、これも電源が必要なものが多いため、普通のボウルに多めの水を用意しておくことも合わせて考えておきましょう。
また、ドライフードを少し多めにストックしておく習慣も、いざというときの助けになります。
「帰れないかもしれない」ときの連絡手順を決める
実際に帰宅困難になったとき、パニックの中でも動けるよう、あらかじめ連絡の手順を決めておくことが大切です。
たとえば、こんな流れを決めておくと安心です。
1. 帰宅が難しいと判断したら、まず家族または頼める人にLINEや電話で連絡する
2. 「今日中に帰れないかもしれない、あの子のことをお願いしたい」と伝える
3. 合鍵の場所・情報シートの場所を伝える
4. 状況が変わったら都度連絡する
「連絡しにくい」と思って後回しにしてしまうことが、一番あの子を危険にさらします。早めに、はっきりと頼むことが、その子を守ることにつながります。
また、スマートフォンのバッテリーが切れることも想定して、モバイルバッテリーを持ち歩く習慣もあわせて持っておきましょう。
財布やスマホに「ペット情報カード」を忍ばせておく
飼い主自身が意識を失ったり、連絡が取れなくなったりする最悪の事態も、頭の片隅に置いておきたいことです。
そのために、財布やスマホケースに「ペット情報カード」を入れておく方法があります。
カードには、こんな内容を書いておきましょう。
- 「自宅に犬(または猫)がいます」
- 動物の名前・種類
- 頼める人の名前と電話番号
- かかりつけ動物病院の電話番号
名刺サイズのカードに手書きでも十分です。いざというとき、周りの人や救急隊員がこのカードを見て、あの子のことを誰かに伝えてくれるかもしれません。
小さなカード一枚が、あの子の命をつなぐことがあります。
今日からできる、小さな一歩
「帰れない夜」の備えは、難しいことではありません。今日、まず一つだけやってみてください。
① 頼める人に「もしものとき、うちの子をお願いできる?」と連絡してみる。
話し合うだけで、気持ちがずっと楽になります。合鍵の共有や情報シートの作成は、その後でも大丈夫です。
② 財布の中に、小さなペット情報カードを入れておく。
名前・頼める人の電話番号・動物病院の番号、この3つだけでも書いておくと、いざというときの安心が変わります。
あの子は、あなたが帰ってくるのをいつも待っています。その子のために、今日の小さな一歩を、ぜひ踏み出してみてください。
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