犬・猫のごはんと皮膚・被毛|食事で変わる「毛並みとかゆみ」の話

「毛並みがなんとなく違う」は、ごはんからのサインかもしれない
ブラッシングのとき、いつもより毛がパサついている気がする。やたらとかゆがる日が続いている。フケが増えた、毛のツヤがなくなってきた——そんな変化に気づいたとき、多くの飼い主さんはまずシャンプーやケア用品を見直そうとするかもしれません。
でも、皮膚と被毛の状態は、毎日のごはんと深くつながっています。外からのケアと同じくらい、あるいはそれ以上に、「何を食べているか」がその子の肌と毛の健康を左右しているのです。
この記事では、食事と皮膚・被毛の関係を飼い主さん目線でやさしくひもといていきます。「うちの子の毛並みをもっとよくしてあげたい」「かゆみの原因を探りたい」そんな気持ちを持つ方に、少しでも役立てれば嬉しいです。
皮膚と被毛は「体の内側」を映す鏡
犬も猫も、皮膚と毛は体の中でもとくに多くのエネルギーと栄養を必要とする部位です。毛は常に生え変わり、皮膚は外の刺激から体を守るバリアとして働き続けています。
そのバリア機能を支えているのが、食事から摂る栄養素です。タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルなど、さまざまな成分が皮膚の細胞を作り、毛の成長を助け、うるおいを保つ働きをしています。
逆に言えば、栄養のバランスが崩れると、真っ先に影響が出やすいのが皮膚と被毛。体の「後回し」にされやすい部位でもあるため、内側の不調が外側のサインとして現れやすいのです。
「毛並みは健康のバロメーター」とよく言われますが、それはこういう理由からです。
毛並みとかゆみに関係する主な栄養素
食事と皮膚・被毛の関係を考えるうえで、とくに注目したい栄養素をいくつか紹介します。
- タンパク質:毛の主成分であるケラチンを作るために欠かせません。質の高いタンパク質が不足すると、毛がパサつく・抜けやすくなるといった変化が出やすくなります。
- 必須脂肪酸(オメガ3・オメガ6):皮膚のうるおいを保ち、炎症を抑える働きがあります。とくにオメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は、かゆみや赤みを和らげる効果が期待されています。魚油や亜麻仁油などに多く含まれています。
- 亜鉛:皮膚の細胞の再生や免疫機能に関わるミネラルです。不足するとフケが増えたり、皮膚が荒れやすくなることがあります。
- ビタミンA・E:皮膚の健康維持や抗酸化作用に関わるビタミンです。過不足どちらも皮膚トラブルにつながることがあるため、バランスが大切です。
- ビオチン(ビタミンB7):毛の成長と皮膚の健康に関わるビタミンで、不足すると毛がパサつく・フケが出やすくなることがあります。
これらの栄養素は、バランスよく摂ることが重要です。「これさえ与えれば大丈夫」という魔法の食材はありませんが、総合栄養食のフードを基本にしながら、その子の状態に合わせて調整していくことが大切です。
「かゆみ」が続くときは、食物アレルギーも視野に
かゆがる・皮膚が赤い・耳をよく掻く——こうした症状が続くとき、食物アレルギーや食物不耐性が関係していることがあります。
犬や猫の食物アレルギーは、特定のタンパク質(鶏肉・牛肉・小麦・大豆・乳製品など)に対して免疫が過剰反応することで起こります。症状は皮膚のかゆみや赤みとして出ることが多く、消化器症状(軟便・嘔吐など)を伴う場合もあります。
食物アレルギーが疑われる場合、動物病院では「除去食試験」という方法で原因食材を特定していきます。これは、今まで食べたことのない新しいタンパク質源のフードだけを一定期間与えて、症状が改善するかどうかを見る方法です。
自己判断でフードをころころ変えると、かえって原因の特定が難しくなることがあります。かゆみが長引いているときは、まずかかりつけの獣医師に相談してみてください。
フードを変えると、どのくらいで変化が出る?
「フードを変えたら毛並みがよくなった」という声をよく聞きますが、食事の変化が皮膚・被毛に現れるまでには、ある程度の時間がかかります。
一般的に、毛のサイクルは数週間〜数ヶ月単位で動いています。フードを変えてすぐに変化が出るわけではなく、継続して与えながら1〜3ヶ月ほど様子を見るのが目安になります。
そのため、「変えてみたけど効果がなかった」と早々に判断してしまうのは少しもったいないかもしれません。変えた日付と、その後の毛並みやかゆみの様子を記録しておくと、変化を客観的に確認しやすくなります。
もふ手帳のような記録アプリに日々の食事内容と体の状態をメモしておくと、振り返りのときにとても役立ちます。
フードの「品質」に目を向けてみる
市販のペットフードには、総合栄養食・一般食・おやつなど、さまざまな種類があります。毎日のごはんとして与えるなら、「総合栄養食」と表示されているものを選ぶのが基本です。
フードの品質を見るうえで、原材料の表示を確認する習慣をつけてみましょう。原材料は配合量の多い順に記載されているため、最初に書かれているものが主成分です。
- 肉・魚などの動物性タンパク質が上位に来ているか
- 人工添加物(着色料・保存料など)が多く含まれていないか
- 「ミートミール」「副産物」などの記載の意味を調べてみる
ただし、原材料だけで品質のすべてを判断することはできません。気になることがあれば、かかりつけの獣医師や栄養に詳しい専門家に相談しながら選ぶのが安心です。
「おやつ」も皮膚・被毛に影響する
フードだけでなく、毎日のおやつも皮膚・被毛の状態に影響を与えることがあります。
とくに気をつけたいのは、おやつの与えすぎによる栄養バランスの乱れです。おやつの割合が増えると、総合栄養食から摂れるはずの栄養素が相対的に不足してしまいます。おやつはカロリーの10〜20%以内が目安とよく言われますが、その子の体重や健康状態によって異なるため、量については獣医師に確認してみてください。
また、おやつに含まれる特定の食材がアレルギーの原因になっている場合もあります。かゆみが気になるときは、フードだけでなくおやつの内容も見直してみましょう。
受診の目安——こんなときはかかりつけへ
食事を見直してみても改善しない場合や、次のような症状がある場合は、早めにかかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。
- かゆみがひどく、掻きすぎて皮膚が傷ついている
- 赤み・湿疹・かさぶたが広がっている
- 毛が円形に抜けている、または急激に抜け毛が増えた
- フケが大量に出る、皮膚がべたつく
- 耳を頻繁に掻く、頭を振る
- 皮膚の症状と一緒に食欲低下・元気消失がある
皮膚トラブルの原因は食事だけでなく、感染症・寄生虫・ホルモン異常・環境アレルギーなど多岐にわたります。自己判断で対処しようとすると、原因の特定が遅れることもあるため、気になる症状が続くときは早めに受診してください。
今日からできる、小さな一歩
まずは今日から、その子の毛並みとかゆみの様子を観察して記録してみましょう。「今日は少しパサついていた」「耳をよく掻いていた」など、気になったことをメモするだけで十分です。日付とともに残しておくことで、変化のパターンが見えてきます。
そして、今与えているフードの原材料表示を一度じっくり見てみるのもおすすめです。「このフードに何が入っているんだろう?」と興味を持つことが、その子の食事を見直す第一歩になります。
毛並みは、毎日のごはんが積み重なって作られていくものです。あの子のふわふわをもっと輝かせるために、今日のごはんから少しだけ意識を向けてみてください。
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